このブログを検索

2016年10月31日月曜日

多賀町栗栖にて 草葺民家の刺萱作業を行いました



10月29、30日の秋晴れの2日間、多賀町来栖にある、草葺の民家の刺萱作業を、

地元の方・協力者・滋賀県大生・計画工房スタッフで行いました。

これ以上放っておくと朽ちてしまう建築的、文化景観的に大切な民家を、

少し手を加えることでながらえ、出来れば保存利活用の手立てが探せたらいいなと思います。

2016年10月4日火曜日

「民家やまちやのこと なんでも相談室」を開催しました

10月2日、鳥居本宿(彦根市)で開催された、とりいもと宿場まつりにて、
「民家やまちやのこと なんでも相談室」を開催いたしました。



「岩根家住宅」の一室をお借りし、落ち着いた雰囲気のなか、
町家や古民家、住まいの相談などを、あれこれお聞かせいただきました。




弊社では、住まいや建物などのご相談を、このような催しの時に限らず、
いつでもお受けいたしております。


お客様の大切な住いを末永く、快適で経済的にお使いいただくためにも、
ぜひ我々をご活用いただき、なんでもご相談ください。

計画工房I.T株式会社

2016年9月26日月曜日

とりいもと宿場まつりに参加いたします


10月2日に催される、
第9回とりいもと宿場まつり (滋賀県彦根市鳥居本)
にて、「民家やまちやのこと なんでも相談室」を開きます。

彦根市指定文化財「岩根家住宅」の一角をお借りし、
古民家や町家の改造や改修のほか、改築、新築などに関する不安や疑問、
新しい用途への活用の仕方など、なんでも無料でご相談を承ります。

相談員は、代表の戸所岩雄(建築家・一級建築士)が務めます。

古い建物の現代の住まいへの再生、活用はもちろん、
彦根の町家 本町宿」や「八幡堀石畳の小路」など、商業施設へのリノベーション、
小規模多機能居宅介護施設、グループホームなど福祉施設への転用など、

民家や蔵、町家などを扱った多くの実績があります。


所有されている建物について心配、お困りの方、

古い家屋の取得、活用を検討しておられる方。

その他、住まいや建物について誰に相談したら良いのか分からない方など、

この機会をぜひご利用いただき、大切な資産の有効活用を考えてみませんか。









2016年6月6日月曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(13)-創造的修景を考える-















創造的修景について述べてきたこのシリーズは今回で終了します。

最後に創造的修景のもつ意味を改めて述べながら、その目的とするところを示して、まとめといたします。


創造的修景とは創造と修景という二つの一見矛盾するフレーズを一つの言葉として考えます。

そのような曖昧さとか矛盾を内に抱きながらも成立する概念は、日本的感性のひとつの集約ともいえる茶の世界にも生きています。

すなわち、絢爛豪華、また高度に洗練された美を尊ぶ美意識と、時を経ることや多様な手法のコラボレーションがもたらす枯淡な美を楽しむ美意識のどちらの価値観も茶の世界は併せ持っています。


ONE for ALL,ALL for ONE」という言葉があります。

それぞれが個を主張している多様なあり方と、全体として統一感や連帯感を持つ状態とは、言葉のうえでは矛盾する状態と言えます。

しかしそれらを併せ持たせる価値観があり、その価値観に基づいた創造的修景の手法を用いることで、豊かな景観環境が実現可能であることはこれまで述べてきた通りです。

政府のある調査では人々の関心が物質的豊かさより、心の豊かさを重視する傾向にあることを示し、また同じ調査で、人とのつながりは生活満足度を高めるとも伝えています。


来訪者をもてなす住み手の心をしつらえに表現すること。

受け継がれてきたものの中にある、これからも魅力を持ち続ける価値に新しい創造を加えること。

これら創造的修景の手法が、人のつながりをつくり、心の豊かさを高めるツールとして、各地の修景に役立つことを願います。

第12回<<

2016年6月3日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(12)-創造的修景を考える-

町家に関心を持つ人が増えています。

今回は、町家を現代の住まいとして考えるときの課題を示し、町家再生を歴史的環境での修景事業としてとらえた時のすすめ方をお話します。

現代の住まいとしての町家の課題
  • (1)個人の生活空間としてのプライバシーの確保と、町家の特徴である、まち空間への連続性・開放性の両立をどう処理するかということ。
  • (2)経済合理的に基づく機能性、効率性な間取りへの欲求と、町家のもつゆとり感、あいまい(ファジィ)空間の持つ多様性との折り合い。
  • (3)私の好み(個性)の発揮=他者との差別化と考える人にとって、個の住まい(町家)も景観のひとつとして捉える考えに抵抗がないか、没個性と考えないかどうか。
すまいとしての町家再生では、これらの課題を、町家の機能的、文化的価値を正しく評価し、それらと現代的欲求をうまくかみあわせることで解決していくことになります。
 

2016年5月31日火曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(11)-創造的修景を考える-

時間に耐え得る価値についてお話しています。

前回に続き、時代を超えて美しさや魅力を保つことの2つの面のうち、
  • (2)経年変化によって本来の魅力とは変わりながらも、その過程で評価された新たな魅力や、後に付加した価値も含めた価値が持続し続けること。
について述べます。

この(2)を考慮した修景は、外観の画一的な整理を目的とした一定のルールによる改修の方法を採用しません。

そのように、様式の統一感による魅力を作るのではなく、個々の建造物に長年親しまれ、受け継がれ、付け足され、淘汰されてきた価値や魅力を、まずは評価、選択し、余分なものを消去していくことで、もとあった個性を浮かび上がらせていきます。

そしてそのなかにこれから先も人々に魅力を与え続けていく可能性のあるものを見いだし、それに今の時代の知恵の総集を付け加えるという操作を行うことで、時代を超えて時間に耐える修景を進めていきます。



歴史的景観を紡ぐ














豊かな生活環境を創造したいという多くの市民の願いと、修景という創造への期待が一致した理想のまちづくりを実現するため、(2)を念頭に、時代を超えても魅力あるまちを創り続けていくという気概をもち、建物だけにとどまらず一石一木にいたるまで細やかな配慮を行き渡らせた修景が求められます。

第10回<<>>第12回

2016年5月29日日曜日

寺院 伽藍・境内整備のよくあるご相談

寺院の修理や改造、庫裏や納骨堂などの整備についてこのようなお悩みはございませんか

  • 工事にどのくらい費用や時間がかかるか見当がつかない。
  • 施工業者の技術力が分からない。
  • なるべく大事に使いたいが、建て替えた方がよいと言われる。
  • 関係者に工事の内容を上手く説明できない。協議がまとまらない。等など・・・

このようなご相談に対して、私たちは設計者として、相談者様の側に立った具体的な提案を行い、事業がスムーズに進むようにお手伝いしています。

私たちがお手伝いさせていただいた寺院の実例を一部ご紹介いたします。


境内の総合的な整備を行った事例です。
・本堂屋根の葺替え
・広縁・内陣の修理改修
・照明、音響の改修
・納骨堂の建立
・山門の修理改修
・鐘突堂の修理改修
・太鼓門の修理改修
・庫裏の修理改修
・御茶所の修理改修
・石畳みの修理改修




寺院設計の実例です。本堂を改築しました。内陣部分は元のまま残し曳家を行い、新しくした本堂内に再び設置しました。

















こちらに設計実例を紹介しています。寺院・神社設計の設計事例集







2016年5月27日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(10)-創造的修景を考える-

修景における時間に耐え得る価値についてお話ししています。

前回、時代を超えて美しさや魅力を保つということについて、2つの面があると述べました。


  • (1)創られたときに保有していた魅力や価値(物質的価値を含め)が、損われずに維持されること
  • (2)経年による変化が生じることにより、本来の魅力とは変わっていきながらも、その過程で評価された新たな魅力や、後に付加した価値も含めた価値が持続し続けること。

それぞれの面がどのように、修景計画に作用するのかお話します。

まず(1)を考慮した修景は、その建造物の作られた時代の特徴を代表して復元し顕彰する性格のものとなります。

そこでは文化財的な歴史考証に基づく復元が目的化されると共に、現代建築を伝統的様式を模したパーツでカモフラージュするような改修が行われることもあります。


いわば制度的なお仕着せの計画になりがちで、そこに生活する人のもてなしの心、個性を、まちなみの統一感や連帯感のなかに上手く埋め込んでいく設計がなされない場合があります。

とはいえ、その修景の結果としてそこに博物館的な価値が生まれ、観光客で賑わうという状況が起こるならば、とりあえずの成功とみなせるのかもしれません。

しかしそういった取組にこの先も継続的な活性化を生み出せる魅力があるのかといえば、疑問ののこるところです。

(2)については次回。

第9回<<>>第11回

2016年5月23日月曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(9)-創造的修景を考える-

現在、各地で伝統的な建造物や古いまちなみを生かした修景計画が進められています。

自治体の条例などには修景の目的や方針として、「郷土の美化」「歴史と趣のあるまちなみの再創出」などの言葉が掲げられています。

ところで、このような目的の達成のために修景計画は実施されていくのですが、そのことで本当に実現しなくてはならないのは、持続的な活性化をもたらす地域資産を生み出すことであるのを忘れてはなりません。

つまり、修景によって住民の暮らしを文化的にも経済的にも継続的に豊かにしていくような仕組みをまちに埋め込むことです。

そして、そのことが来訪者の高い満足感や評価を生み出し、それがまた住民の誇りや満足感に還元されるという循環構造を構築していくことです。

継続的に価値を生み出す仕組みの構築を修景の目的とするとき、その成果物は、時代を超えて時間に耐え得る価値を持つものでなければなりません。

この時間に耐え得る価値とは、時代を超えて美しさや魅力を保ちつづけるというこです。

そして価値が保たれるということには次の2つの面があります。

  • (1)創られたときに保有していた魅力や価値(物質的価値を含め)が、損われずに維持されること
  • (2)経年による変化が生じることにより、本来の魅力とは変わっていきながらも、その過程で評価された新たな魅力や、後に付加した価値も含めた価値が持続し続けること

この2つの面をどう扱うかによって修景の方向性に違いが生まれることになります。
その点については次回。

第8回<<>>第10回

2016年5月21日土曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(8)-創造的修景を考える-

平成28年4月28日、滋賀県彦根市の「花しょうぶ通り商店街」が、経済産業省近畿経済産業局の「近畿のイケテル商店街 33 選」の一つとして報告されました。http://www.kansai.meti.go.jp/3-8ryusa/iketeru/iketeru_newsrelease.pdf

また、花しょうぶ通り商店街を含む付近のエリアが、市内では初めてとなる重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定されることがこの5月に決まりました。http://www.denken.gr.jp/archives/Hozontiku/hikone_index.html

今回は夢京橋キャッスルロードに続いて関わらせていただいた、この花しょうぶ通り商店街の修景についてお話します。

花しょうぶ通り商店街には平成10年度の中心市街地活性化法によってファサード整備事業を実現するに至った準備検討段階から関わらせていただき、またファサード改修の実施設計も手がけさせていただきました。



ファサードの整備方針については、伝統的な町家と洋館造りの建物、現代建築などが混在するこの場所の特色を鑑み、外観を何らかのデザインコードで統一的に整えることは避けました。

基本的な方針としては、これまでの使用者によって行われてきた改変部分のうち、余分と思われるものを消去し、そのことで見えていくる個性を生かすことを考えました。そのうえで、この商店街を訪れる人々を、さらに誇りを持ってもてなすための仕掛けや工夫を個々の建物に施しました。

これは、受け継がれてきた伝統的な建築物の中にある合理性と美意識を、新しく創られるものの中に生かし、さらに次なる時代の魅力、活力となる創造を付加していくことです。

また、商店主のもてなしの心(個性)をデザインに反映していくという操作によって、画一的、均等的ではない、まちなみの連帯感や統一感を作っていくことでもあります。

この考え方は前回お話しした夢京橋キャッスルロードの理念である「OLD・NEW」と通底するものです。

第7回<<>>第9回

2016年5月15日日曜日

多賀町I邸改修工事~町家改修・古民家再生・リノベーション~


改修前外観
改修前外観
多賀大社表参道絵馬通りに面する町家の改修工事が始まりました。

絵馬通りとは、多賀大社へのお参りの人で賑わう表参道の名称で、
通りには昔からの姿をとどめる建物と、装いを新たにした商店などが混在しています。

今回の工事では、町家と蔵に残る伝統的なたたずまいのよさを生かしながら、
現代の生活に合った生活空間に改修するとともに、
参拝者や地元の人々に、落ち着いた空間でくつろぎながら、
お茶と軽食と語らいを楽しんでいただける店舗を整備いたします。

店舗は、もともと玄関として使われていた土間部分と、それに続く二間続きの和室、
そして隣接する蔵の1階を喫茶スペースにします。

店舗と外部との関係については、絵馬通りから、店の土間部分と二間続きの和室越しに中庭へ視線の抜けるよう工夫することで、通りからの風景に奥行を持たせたいと考えています。

ただ修復するのではなく、この場所が今日まで人々に魅力を与え続けてきたものの中にある、
これから先も継続的に人々に魅力を与え続けてゆく可能性を持つものを正しく選択し、
さらに今の時代の知恵の総集を付け加えることが大切です。



私は地域再生計画策定委員として、
LLP風のフォーラムから、多賀町のまちづくりに参加させていただいています。

今回の計画が、一件の建物のリノベーションにとどまらず、
「非日常、文化を愉しみ、心豊かに、元気になれる、おもしろい町多賀」

をスローガンに掲げる、多賀のまちづくりの一助となることを願っています。



計画工房I.T株式会社の町家・蔵の再生、活用事例はこちらから。
再生・活用・リノベーション事例集




2016年5月13日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(7)-創造的修景を考える-

















この春、私どもで設計監理を行った建物が、彦根市の夢京橋キャッスルロードに完成しました。

昭和60年代から進められてきたまちなみの修景事業がこうして今も継続できていることは、当初掲げた理念が、まちづくりの良い指標になっていることの証だと受け止めています。

今回はその理念のことを、「伝統・風土など地域の特性を生かす」という考え方と合わせてお話します。


夢京橋の事業に関わり、私たちが作ったコピーが「OLD・NEW 古いよさを生かした新しいまちづくり」です。

「OLD・NEW」は「OLD&NEW」と同じではありません。
後者は古いものと新しいものとの共存、混成を意味します。


「OLD・NEW」は受け継がれてきたものの中にある合理性と美意識を、新しく創られるものの中に生かし、次なる時代の魅力、活力となる創造を行うことを意味します。

これは受け継がれてきた価値の正しい理解と選択によって、次代の優れた価値を創り出していく礎になるDNAを見極め、埋め込んでいくことです。

第6回<<>>第8回

2016年5月6日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(6)-創造的修景を考える-

修景に関わる際に大切な二つの考え方についてお話しています。

一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ
ニ、個性を生かすということ


今回は、地域の景観を考える際の大切な思考方法について、
「ニ、伝統・風土など地域の特性を生かす」という観点から、彦根城周辺での修景事例を題材にお話します。

彦根市全域の景観は大きく次の3つのゾーンに分けて性格づけられています。

  • (1)山なみ景観
  • (2)市街地景観
  • (3)田園集落景観

彦根城周辺は(2)に属し、歴史景観と地域中心景観の核として、重点的に整備されようとしている場所です。

この地域は基本的には江戸期に形成された都市の性格を継承しながらも、後年に付加された優れた建造物なども含め、一帯として歴史的景観として評価されています。

また、まちなみや建築物だけでなく、彦根城の植物の生態系に目を向けてみると、築城以来400年のあいだに形成された植生は、築城後植えられたものを交えて先人の手によって淘汰されてきた結果、現在成熟した様相を呈するものとなっています。

城周辺の景観が江戸期以降の建造物を含めて歴史的景観であると評価されていること。城の植生が淘汰された結果としてげン剤成熟した様相を呈していること。

この2つの状態は、地域の景観を考える際の大切な考え方を示唆しています。

それは、新たに付加されたもので後の評価に耐えていくものは、その先の時代も継続的に魅力を与え続けてゆく可能性を持っているということです。

つまり、受け継がれてきた価値の正しい理解と選択によって付加されてきたものは、次代の優れた価値を創り出していく礎になるDNAを有しているということです。
 
この地域での景観形成手法の例を下記に示します。


 ・たねや美濠の舎 
この地に古くから残る桜の木を取り込んで景観形成を行っている。






 




・ポム・ダムール
周辺のなごりを手を加えて残し、さらに新しいものを創造する。




 





・スミス記念礼拝堂周辺整備への提案
構造物と植生との調和を図る








第5回<<>>第7回

2016年4月29日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(5)-創造的修景を考える-

修景において「ニ、個性を生かすこと」について引き続きお話します。

「創造的」という言葉から受ける印象は、強く自己主張をするものととらえられがちです。
 

似た意味で、「個性を生かす」ということが、「他者との差異を明確にする」と表現される例も見られます。
 

このように強く自己主張することや、他者との差異を明確にするために、とかく饒舌に表現することが、個性を生かすデザインだとする考えがあります。

個性的であるとは果たしてそれだけでしょうか。

2016年4月22日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(4)-創造的修景を考える-

修景に関わる際に大切な二つの考え方についてお話しています。

一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ
ニ、個性を生かすということ

この二つの考え方について、実例を交えて述べます。



夢京橋キャッスルロードの喫茶『茶房 京橋』


これは滋賀県彦根市の中心市街地で、昭和60年から始まった街路整備とともに実施された、修景整備事業の中で手がけた建物の一つです。

この事例では、上記の考え方の二つ目で述べた、「統一感や連帯感を保ちながら画一的、均等的ではない修景のあり方」を実現するために、「このまちを訪れてくれる人々をもてなす心を、共通の手法をもってファサードにする」設計を行いました。

統一感や連帯感を作るための共通の手法と、画一的、均等的にしないという一見相反するコンセプトをつなぐため、私は次のように、住む人のアイデンティティをディティールに表現するという手法を設計に取り入れました。


2016年4月15日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(3)-創造的修景を考える-

修景に関わる際に大切な考え方について述べている記事の二回目です。

前回は、「一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ」について述べました。
今回は、「ニ、個性を生かすということ」について述べます。

 

ニ、個性を生かすということ

修景にあたり、個性を生かすとは、その場所の風景を成り立たせている(成り立たせていた)建物、建物群の外見を単に再現もしくは、それらと調和をはかろうと何かを付け足すことではありません。

個性を生かす修景とは、建物や風景が醸し出している情感や人の心に与える作用のよって来るところを捉え、その成り立ちの要因を見極め、具体的なデザインとして新しく創り出すものの中に再構築することです。

景観として統一感や連帯感を保ちながら、個性を生かすことで画一的、均等的ではない修景の方法を探る意志が必要です。

 
次回以降、この二つの考えを、修景の具体例をあげながら解説いたします。

第2回<<>>第4回

2016年4月8日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(2)-創造的修景を考える-

前回、修景に関わる際に大切な考え方は次のニ点だと述べました。

一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ
ニ、個性を生かすということ

順にご説明いたします。

 

一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ

修景計画を立案する際、そのよりどころとしてその地の伝統や風土の調査や再評価が行われます。

そして、その評価によって得られた知見が修景計画に反映される際、単に形態を受け継ぐという作業になってしまうことが往々にしてあります。

しかし、伝統や風土の再評価を通して私たちが計画しなければならないのは、見かけの形態を受け継ぐことではなく、その場で長い年月人々に親しまれ受け継がれ、また淘汰されてきたものごとの正しい理解に基づいた造形を再構築することです。

これは郷愁としての再現のことを指すのではありません。
 
いにしえから今日まで人々に魅力を与え続けてきたものの中には、これから先も継続的に人々に魅力を与え続けてゆく可能性を持つものが含まれています。

それを正しく選択する視点、選択したものに今の時代の知恵の総集を付け加える技量と強い意志をもって、その場を設計していくことを指しています。


ニ、個性を生かすということ については次回。

第1回<<>>第3回

2016年4月1日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(1)-創造的修景を考える-

このシリーズでは修景によって、まちの風景に周辺環境や風土への配慮を行いながら現代的魅力(価値)を加え、新しい文化景観を創りだし、それを次代へ引き継いでいこくために行う、創造的修景についてお話ししていきます。

近年、地域活性化に向けた施策として、各地でまちなみ整備の動きが活発になるなか、古い建物を改修、改築して修景(風景の整備)を図ろうとする事例も増えています。

そんな建築物のリノベーションブームにより、古民家や町家の活用に関心が高まっていますが、修景の観点からはその手法に少々危なっかしいと思わざるを得ない例が少なからず見られます。
危なっかしいと思われる例をあげますと、
 
  • 構造的・機能的考察に乏しいもの
  • 古建築を、単にファッショナブルな道具として利用しているもの
  • 次代へのまなざしがなく、新しい文化となるべき本質を捉えていないもの  など

これらは資産の正しい評価に基づく活用とは言えず、いわば資産の食い潰しでしかありません。

 

私は修景に関わる際に大切なことは次の二点だと考えます。
 
一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ
ニ、個性を生かすということ
 
これら二点について、次回からお話いたします。

>>第2回

2016年2月10日水曜日

甲良町で住宅を福祉施設にリノベーション(4)

工事監理・工事のあと

滋賀県甲良町にて、空家となっていた民家を用途変更し、小規模多機能型居宅介護の施設に改修するプロジェクトです。

建築確認などの手続き、施工業者の見積チェック、業者選定を行い、着工となります。

改修工事においては、壁や床などを壊してみて初めて分かる建物の問題があるのが普通です。
それらを工事監理者として施工業者と協議を行いながら解決し、工事を進めていきます。


仕上げ材や家具、什器類の提案、選定ももちろん行います。
今回は、既存の木材に塗られていたベンガラの色をそのまま残し、空間のアクセントとしています。




工事監理の他にも必要に応じて、パンフレットに掲載する図版などの作製も行います。

簡易なパースを作製














計画工房I.Tの福祉施設実績はこちら

2016年2月6日土曜日

甲良町で住宅を福祉施設にリノベーション(3)

基本設計・実施設計

滋賀県甲良町にて、空家となっていた民家を用途変更し、小規模多機能型居宅介護の施設に改修するプロジェクトです。

住宅を小規模多機能型居宅介護施設として利用するためには、建築基準法に定める用途変更の手続きが必要です。

さらにこの物件は現行の建築基準法に適合していない既存不適格建築物であったため、その証明のための現況調査、書類作製、申請を行い用途変更が可能となるようにしました。

その他、内装制限や採光、排煙の規定、消防法、保健所の届出などを満足できるよう、諸官庁、機関と協議を行いながら設計を進めます。


福祉施設に限らず、既存不適格建築物の活用について多くの実績があります。
難しいと言われた物件でも一度ご相談ください。

計画工房I.Tの福祉施設実績はこちら

古い建物の活用・リノベーション実績はこちら

2016年2月3日水曜日

甲良町で住宅を福祉施設にリノベーション(2)

基本設計

滋賀県甲良町にて、空家となっていた民家を用途変更し、小規模多機能型居宅介護の施設に改修するプロジェクトです。

物件が決まり、プロジェクトが基本設計の段階へ進みます。

小規模多機能型居宅介護に必要な食堂や居間、宿泊室の数や面積などの要件を満たしながら、安全で使い勝手良く、居心地の良い建物を、既存建物の構造や設備を極力活用しながら計画していきます。

壁のすじかいや基礎仕様の確認など、構造体や設備の詳細な調査、図面化も平行して行います。
基礎鉄筋の調査
すじかいの調査

既存建物を活用することで、場合によっては機能が同等の建物を新築より安く作れるメリットがあります。
しかし、それだけではなく、見慣れた風景のなかで安心して介護を受けられる環境づくりのために既存建物を積極的に活用する、という視点も持ちながら全体のしつらいをまとめていきます。

計画工房I.Tの福祉施設実績はこちら

2016年2月1日月曜日

甲良町で住宅を福祉施設にリノベーション(1)

土地・建物の選定


滋賀県甲良町にて、空家となっていた民家を用途変更し、小規模多機能型居宅介護の施設に改修するプロジェクトです。

小規模多機能型居宅介護の整備に適した物件を選定するところから事業に参画しています。

物件の選定においては、立地の利便性や住環境の評価はもちろんですが、施設として適切な規模であるかどうかの見極めや、改修工事の必要な範囲の予測なども行います。

そうした作業を行うことで、事業計画に占める建築工事費の割合が適正となるように計画を進めていきます。

床下の状態を調査
小屋裏の調査

計画工房I.Tの福祉施設実績はこちら