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2016年4月29日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(5)-創造的修景を考える-

修景において「ニ、個性を生かすこと」について引き続きお話します。

「創造的」という言葉から受ける印象は、強く自己主張をするものととらえられがちです。
 

似た意味で、「個性を生かす」ということが、「他者との差異を明確にする」と表現される例も見られます。
 

このように強く自己主張することや、他者との差異を明確にするために、とかく饒舌に表現することが、個性を生かすデザインだとする考えがあります。

個性的であるとは果たしてそれだけでしょうか。

2016年4月22日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(4)-創造的修景を考える-

修景に関わる際に大切な二つの考え方についてお話しています。

一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ
ニ、個性を生かすということ

この二つの考え方について、実例を交えて述べます。



夢京橋キャッスルロードの喫茶『茶房 京橋』


これは滋賀県彦根市の中心市街地で、昭和60年から始まった街路整備とともに実施された、修景整備事業の中で手がけた建物の一つです。

この事例では、上記の考え方の二つ目で述べた、「統一感や連帯感を保ちながら画一的、均等的ではない修景のあり方」を実現するために、「このまちを訪れてくれる人々をもてなす心を、共通の手法をもってファサードにする」設計を行いました。

統一感や連帯感を作るための共通の手法と、画一的、均等的にしないという一見相反するコンセプトをつなぐため、私は次のように、住む人のアイデンティティをディティールに表現するという手法を設計に取り入れました。


2016年4月15日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(3)-創造的修景を考える-

修景に関わる際に大切な考え方について述べている記事の二回目です。

前回は、「一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ」について述べました。
今回は、「ニ、個性を生かすということ」について述べます。

 

ニ、個性を生かすということ

修景にあたり、個性を生かすとは、その場所の風景を成り立たせている(成り立たせていた)建物、建物群の外見を単に再現もしくは、それらと調和をはかろうと何かを付け足すことではありません。

個性を生かす修景とは、建物や風景が醸し出している情感や人の心に与える作用のよって来るところを捉え、その成り立ちの要因を見極め、具体的なデザインとして新しく創り出すものの中に再構築することです。

景観として統一感や連帯感を保ちながら、個性を生かすことで画一的、均等的ではない修景の方法を探る意志が必要です。

 
次回以降、この二つの考えを、修景の具体例をあげながら解説いたします。

第2回<<>>第4回

2016年4月8日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(2)-創造的修景を考える-

前回、修景に関わる際に大切な考え方は次のニ点だと述べました。

一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ
ニ、個性を生かすということ

順にご説明いたします。

 

一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ

修景計画を立案する際、そのよりどころとしてその地の伝統や風土の調査や再評価が行われます。

そして、その評価によって得られた知見が修景計画に反映される際、単に形態を受け継ぐという作業になってしまうことが往々にしてあります。

しかし、伝統や風土の再評価を通して私たちが計画しなければならないのは、見かけの形態を受け継ぐことではなく、その場で長い年月人々に親しまれ受け継がれ、また淘汰されてきたものごとの正しい理解に基づいた造形を再構築することです。

これは郷愁としての再現のことを指すのではありません。
 
いにしえから今日まで人々に魅力を与え続けてきたものの中には、これから先も継続的に人々に魅力を与え続けてゆく可能性を持つものが含まれています。

それを正しく選択する視点、選択したものに今の時代の知恵の総集を付け加える技量と強い意志をもって、その場を設計していくことを指しています。


ニ、個性を生かすということ については次回。

第1回<<>>第3回

2016年4月1日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(1)-創造的修景を考える-

このシリーズでは修景によって、まちの風景に周辺環境や風土への配慮を行いながら現代的魅力(価値)を加え、新しい文化景観を創りだし、それを次代へ引き継いでいこくために行う、創造的修景についてお話ししていきます。

近年、地域活性化に向けた施策として、各地でまちなみ整備の動きが活発になるなか、古い建物を改修、改築して修景(風景の整備)を図ろうとする事例も増えています。

そんな建築物のリノベーションブームにより、古民家や町家の活用に関心が高まっていますが、修景の観点からはその手法に少々危なっかしいと思わざるを得ない例が少なからず見られます。
危なっかしいと思われる例をあげますと、
 
  • 構造的・機能的考察に乏しいもの
  • 古建築を、単にファッショナブルな道具として利用しているもの
  • 次代へのまなざしがなく、新しい文化となるべき本質を捉えていないもの  など

これらは資産の正しい評価に基づく活用とは言えず、いわば資産の食い潰しでしかありません。

 

私は修景に関わる際に大切なことは次の二点だと考えます。
 
一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ
ニ、個性を生かすということ
 
これら二点について、次回からお話いたします。

>>第2回