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2016年4月22日金曜日

個性と伝統を生かす街と建物のリノベーション(4)-創造的修景を考える-

修景に関わる際に大切な二つの考え方についてお話しています。

一、伝統・風土など地域の特性を生かすということ
ニ、個性を生かすということ

この二つの考え方について、実例を交えて述べます。



夢京橋キャッスルロードの喫茶『茶房 京橋』


これは滋賀県彦根市の中心市街地で、昭和60年から始まった街路整備とともに実施された、修景整備事業の中で手がけた建物の一つです。

この事例では、上記の考え方の二つ目で述べた、「統一感や連帯感を保ちながら画一的、均等的ではない修景のあり方」を実現するために、「このまちを訪れてくれる人々をもてなす心を、共通の手法をもってファサードにする」設計を行いました。

統一感や連帯感を作るための共通の手法と、画一的、均等的にしないという一見相反するコンセプトをつなぐため、私は次のように、住む人のアイデンティティをディティールに表現するという手法を設計に取り入れました。



アイデンティティを表現するとは、統一感や連帯感をもってしつらえた場が、住み手のこまやかな手が加えられたとき、はじめていきいきとした表情を見せるよう、設計を工夫することです。

場のしつらいと、住み手によって選び抜かれたタペストリー、季節感漂う飾りなどの、細やかな小道具が一体感を持つとき、全体として統一感のある景観の中に住み手の心遣いが個性としてが浮かび上がって来ることを意図しています。

たとえお店を開けていない時であっても、表情の変化を創れるよう、左手の格子をスルスルと右手へ動かすことで、内と外とを適度に遮蔽できるように設計してあります。

時の移ろいとともに、住み手の気遣いで多様な表情を見せてくれるのが、この景観の魅力です。

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